2012年2月10日金曜日

もののけ姫さいこう


こんばんは。

いやはやどうも、自分はジブリ作品「もののけ姫」(1997)を間違いなく過小評価している、と思い、最近になって二回ほど見返した上、自分なりに再考してみました。

Princess Mononoke



結果、「もののけ姫」の(自分が)置いてきぼりになった部分、学生の時に最初に見たときはまったく受け付けなかった部分が、今になってクリアに、そしてじんわりわかるという現象が起こって愕然とした。この作品の時代背景や、人物描写、世界観などはこれでもかとダメ押したくなるほど混沌としていて、ナウシカ(アニメ映画版)に描かれるすっきりした?二極対立的世界のイメージとは似ているようで全く異なっている。両者とも虚構ファンタジーとはいえ、今更気づいたというのが不覚だったと悔いる。

とはいえ二極対立は、もちろんもののけ姫のなかにも大きい支柱となり、それは革命家エボシあるいはサムライつまり「人」と山犬やシシ神といった「神、自然」との対立構造であるが、実際はエボシと侍にも戦争が起こっており、山犬とイノシシの神たちの間にも決裂がある。もののけ姫と呼ばれるサンも山犬の娘と名乗るが実際は人間であり、どうやらナゴの神にさしだされたいけにえの娘であるらしい。サンとエボシの対決は、ただの縄張り争いではなく、矛盾と矛盾のかけあわせのようであり、こういった事情がもののけ姫のWIKIに詳しく記述されているので、一回はお目を通すことをオススメしたい。

さらにサンとエボシの対決によそ者のアシタカが割って入っていって、一旦争いを収束させるが、石火矢を打たれて死にそうになり、山林に逃れるがシシ神とサンに命を救われる。これが中盤の見所である。見ている私たちは、ここで完全に置き去りになる。いままでアシタカが物語の完全な主人公であり、いっぱしの観客としてそれまで彼に同化して物語を理解してきたつもりだったのに、まったく思考と行動の理念が理解をこえてるので一同ポカーンとするしかないのである。それよか冷徹なエボシのほうが、よっぽど理解しやすい。
そこは要するに同じ近代人なのである。

これ以降、アシタカとサンは物語をほぼ一緒にたどってゆくが、アシタカは最後まで事態に翻弄され続ける。ほかのキャストたちがほぼ自分の目的だけを忠実に追い求めているのにアシタカだけが後追いで「起こってしまったこと」の後片付け、収束役を一手に引きおける存在となる。そういうアシタカにサンは事態収束の協力を求められ拒否し、逆上してアシタカからもらった小刀でアシタカを刺す。ほんの数日前に自分が助けたものを刺す、ここにも矛盾。サンは刺してすぐそれに気がつく。しかしこの物語には矛盾がやたら多い。(……第一、シシ神がいちばんよく分からない。何なんだアイツは)


前半にあれほどイケイケだったエボシは、物語の終わりにかけては虎の穴である堅牢なたたら場をサムライたちに攻め落とされかかり、しかもそれも知らずジコ坊、師匠連にそそのかされてシシ神の首をみずからすすんで落とす(「神殺し」)。最後は首だけになったモロに右腕を噛み千切られる。しかも部下に助けられ生き残る。あまりに哀れだ。それで最後に自分の行いを振り返り恥じる。(余談だが、風の谷ナウシカでトルメキアの女司令官クシャナは過去、虫に食い破られて右腕が義手だった。こんな所に一致がある。)

エボシの抱える矛盾は一番深刻にみえる。アシタカやサンはおいては自分にふりかかった不幸、難題を振り払おうとするこころみであり、あるいは矛盾というより生存本能にもと付いて解釈することが出来る。それにつけエボシは自分の欲をコントロールしてるのか暴走させているのか簡単には判別できず、しかも裏ではスパイか忍者のような者たちに操られている。目的のために手段を選ばない、神を殺すこともためらわない、背後から打たれようとしても突き進むことをやめないエボシはまさに科学に取り憑かれた現代人の姿を彷彿とさせる存在である。

タイトルのコピーが「生きろ。」であるように、最後にやっぱりアシタカもサンもエボシもみんな死なない。エボシが囲っていた石火矢を改造していた重病人たちもラストのシシ神効果でさっぱりと包帯がとれている。死んだのはシシ神、山犬のモロ、イノシシたち。あーあみんな生き返って欲しかったけど。ここに従来の物語の否定と、誰かの決定的死により安易に結をむすばないという宮崎駿のメッセージがある(アシタカの左手呪いもほんのり薄く残っている)のだが、まったくそういう一連のことに気が付かなかった。サッパリでしたね。愚かや…。いまさら遅すぎました。スンマセン。ほんまにスンマセン。

あと一つだけいいたのは、各戦いにおいてアシタカがもー異様に強すぎて、最初の頃は「#(・д・)チッ カッコつけてんじゃねーよ」と嫉妬し、非常に狭い視点でしか彼を見れなかったのですが、もしアシタカが弱ければ客はついてこないし死んだら話はそこで終わりだし、山犬にもサンにもバカにされるだろうしやっぱ設定上アシタカが最後まで強くてイケメンなのは仕様だから、もう諦めることにしました(メデタシ)。


(とりあえずWikiを参考にしながら思いつくことだけ列挙してしまいました。乱文でスミマセン)


ほか
「もののけ姫」の基礎知識http://www.yk.rim.or.jp/~rst/rabo/miyazaki/kisochishiki.html

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