2015年9月11日金曜日

「抱く女」 桐野夏生 

「抱く女」
新潮社 2015/6/30
http://www.amazon.co.jp/dp/4104667048
書評などというと偉そうなので、今回は読後感想文です。




今作は、桐野さんの作品のなかでは、ちょっとした変化球になると思います。
桐野さんが常に時代の先を読む小説家で、ハードボイルドというジャンルから出発した作家であることを念頭にすると、この「抱く女」は非常に桐野夏生ファンにとっては新鮮で、ある意味、意表を突かれました。

もしかしたら、今の殺伐とした状況が、その桐野さんの過ごしたという青春時代のような、混沌としたものを抱えている状況なのかもしれません。
桐野作品にしては地味な印象は拭えませんが、桐野さんの世代、その時代に生きた人にとってはリアリティのある青春小説とうつったでしょう。


それならば今回は自伝的、回想的、ノスタルジックなものなのだろうか、とお考えになるかもしれませんが、まったくそんなこともなく、桐野作品らしい、鈍器で2,3発殴られたようなとてもシャープ(?)な読後感を味わわせてくれます。

ぜひアマゾンの書評レビューコーナーを見てください。
桐野夏生の作品はいろいろな層からの支持があると思われます。
年齢層幅だけでなく、男女かかわらず読まれているのと、文体が難しくなく、だれずに一気に読ませる構成やストーリーをもっているため、一度読んだら止まらなくなる本が多い。そういう読書家ではないが桐野作品は読む、という人もいるんじゃないかと睨んでいるわけです。

そういう意味でレビューは濃いです。
アマゾンレビュー欄で読む、この本の一般読者が感じていることとは。
「困惑」「狼狽」「嫌悪」
この本は読む人によって姿を変える。
読まれることにで血肉となる。



現代ビジネス
著者インタビュー
「抱かれる女から「抱く女」へ  1972年吉祥寺、揺れ動く時代を切実に生きた女性を描く」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44179


一部引用↓
「そういえばこの作品にとりかかるとき、何十年かぶりに、アルバイトをしていたジャズ喫茶に行ったんです。直子が通う「CHET」の店主・桑原のモデルになった当時のマスターがまだ店にいて、思わずハグしたりして。懐かしかったですね。」



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