失踪日記2 アル中病棟 [コミック] 吾妻ひでお/イースト・プレスhttp://www.amazon.co.jp/dp/4781610722
ロリ系の絵が人気だった、漫画家吾妻ひでお。
自身の体験を語った「失踪日記」。30万部のベストセラーとなった衝撃作である。
著者自身が、酒浸りの生活を送り、アルコール中毒症状で入院し(家族に担ぎ込まれ。)た経験をおおいに盛り込んでいる。
それから8年、失踪日記の終盤で、飛ばし気味に語られていた部分、アル中病棟での日々が、より詳細に赤裸々に解説されたのがこの書「アル中病棟」である。
本書における主な内容は、病棟での人間関係。それに尽きる。
アル中病棟に入院してくる人のほとんどは、だらしない人・・
ともいきや、そうでない人もいるわけで、そこも実に面白い。
アル中病棟には、常連客も多くいて、そこでの生活に馴染んでいる人も。
年齢も幅広く、男女入り混じった、まさにひとつの社会を形成しているわけである。
まさに、クワイエットルームへようこそ(映画)の世界そのもの。
まず、アル中の患者が抱える最大の問題、それは
「呑みたい、でも呑めない、酒やめたい、でもココ出たら絶対呑む!」
という矛盾した自制と欲望との限りない闘いの日々、葛藤の入院生活なのである。
そもそも、アル中患者というのは、精神病に似たところがあって、自分のことをなかなか病気だとか依存症であるとかを認めづらい(認めたがらない)んだそうだ。
それが、この病気を直すのを一番に阻害する要因となっているのである。
著者の吾妻ひでおは、同士とりみき(漫画家)との対談において
こう語ったそうだ。
「あんまり先のことを考えないで、展望を持たないってことかな。今日一日が楽しければいい。酒呑まないと朝の目覚めもいいですからね。メシもうまいし」
(酒を飲まないでいる秘訣をきかれて)
展望を持たない・・。
それが酒を止めるのにいいんですね。
要するに、人生に目標を持たないってことですよね。
つまり酒浸りの人は、非常に志が高く、真面目で、頑張り屋さんで、故にいつも現実に押しつぶされそうになってる人、ってことなんでしょうか。実は。
本書は、「失踪日記」同様、非常にクールな視点で自分をあたかも第三者であるかのように突き放して描かれていて、ユーモアも満載で笑えるし、漫画としての軽快なテンポの良さも、醍醐味になっている。あと、この人は絵が異常にウマイ。これほどの絵がかける漫画家はそうはおらないだろう。女の子を描かせたら右に出るものはおるまい
アルコール依存症のための、あたらしい教科書とも言える本書に限りない称賛を表します。
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