こんばんは、
ご無沙汰しております。
長らくおまたせしていた「読書がしたくて」のコーナーです。
桐野夏生「ハピネス」を読みました。
ネット上で、書評や感想文、ブログをチェックしていったんですが、「読み始めたら止まらず、一気に読んでしまった」という声が多かったのが目についた。
あらすじは
だいたいこんな感じである。
(ネタバレ含む)
まだ小さい子供を持つ、東京に暮らす主婦たちの寄り集まる姿。主人公は念願かなって、ベランダから海を望む憧れの「タワマン」(超高層タワーマンション)に三歳の娘と暮らす主婦。一見、優雅に見える生活を送るが、内実は、とてもそんな風でないことは、とっくに主人公にはわかっている。虚勢を張り続けることができなくなった時、彼女の心は自分の触れたくなかった過去に向かうのだった。同時に嫌がおうにも、向かってくるリアルな現実に対峙しなくてはいけない。主人公とママ友との付き合いを通じて描かれる、曖昧な差別意識、口に出すことのはばかられる様々な格差が、彼女の孤独感を痛烈なまでに増幅させ、流れは読者を道連れに寒々しい展開になだれ込み。そして目の前に迫る離婚、突然予告なしに帰国する単身赴任の夫。直談判の末に、主人公の決意はいかに・・・??
だんだん読み進めると、最初は距離を置いていた主人公に、その心が揺れ動くさまを、まるで自分のこころがそうなるみたいな錯覚に突如陥りそうになる不思議。
この小説のドライブ感は、後半以降、急激に読者の心を掴んで更に加速していく。
江東区の土屋アンナ、と呼ばれる設定の美雨ママがこの小説におけるキーマンである。彼女の行動力と動物的魅力によって、主人公は変貌へのきっかけを手にする。
総じて、桐野夏生の中期の作品群における異様なほどのアグレッシブさは、ここのところの作品をよむ限りでは息を潜めているかのようにも思える。しかし桐野作品が詰まらなくなったというとそうではない。程度の差こそあれ主人公は同じように過酷な現実を生きている。この作品を通じて知るのは、桐野夏生という作家の熟成である。
いまの桐野夏生先生は、東京に生きる主婦の生態、そんなありふれたテーマを持たせながら、ハードカバーの小説を、一般的な読者に一日で読み切らせる、そんなものすごい筆力とイマジネーションを持った作家である。重ねて言っておくが、主人公は超能力を持った主婦でも、ロシアの諜報機関から報酬を受け取る女スパイでも、はたまた魑魅魍魎をあやつり妖怪ども蹴散らす巫女、いにしえより伝わる秘術を授かる高貴な家系の末裔、でもなんでもないよ。
こいつの前に読んだ「ポリティコン」(上下巻)・・桐野夏生の長編も非常に楽しく読めたんだけど、この2つの物語の持つカタルシスとドライブ感には圧倒されました。古本屋でもし見つけて買ったらぜひ体験して見て欲しいと思います。
また、ネット上で気になった書評のブログのリンクも貼り付けておきます。
◇桐野夏生 『ハピネス』
私が全く知らなかった「ママ友」の世界を皮肉たっぷりに切り込んだ快作
http://yottyann.at.webry.info/201304/article_5.html
(日記風雑読書きなぐり)
◇本の感想:ハピネス/桐野夏生
http://mrgarita.blog.fc2.com/blog-entry-551.html
(まいにちしんぶん 人生は読めないブログ)
《加筆》4/26
桐野夏生の今までの小説にあったかどうかはわからないが、この小説には美雨ママの容姿と性格の設定において、実在のモデル(芸能人)「土屋アンナ」の名がそのまま出てくる。(「江東区の土屋アンナ」と形容される。)このように固有の実在の人物を投影するとは、ちょっと珍しいことにも思えるが、たしかに土屋アンナというパーソナリティーは芸能界の中でも、ほかに言い表しようがない確固たる表現なのかもしれない。そして桐野夏生さんにとって”土屋アンナ”は如何なる存在なのか、というのも気になるところだ。
まあ、土屋アンナがわりと好きなので、嬉しい出来事ではありました。
じゃ。
ご無沙汰しております。
長らくおまたせしていた「読書がしたくて」のコーナーです。
桐野夏生「ハピネス」を読みました。
ネット上で、書評や感想文、ブログをチェックしていったんですが、「読み始めたら止まらず、一気に読んでしまった」という声が多かったのが目についた。
あらすじは
だいたいこんな感じである。
(ネタバレ含む)
まだ小さい子供を持つ、東京に暮らす主婦たちの寄り集まる姿。主人公は念願かなって、ベランダから海を望む憧れの「タワマン」(超高層タワーマンション)に三歳の娘と暮らす主婦。一見、優雅に見える生活を送るが、内実は、とてもそんな風でないことは、とっくに主人公にはわかっている。虚勢を張り続けることができなくなった時、彼女の心は自分の触れたくなかった過去に向かうのだった。同時に嫌がおうにも、向かってくるリアルな現実に対峙しなくてはいけない。主人公とママ友との付き合いを通じて描かれる、曖昧な差別意識、口に出すことのはばかられる様々な格差が、彼女の孤独感を痛烈なまでに増幅させ、流れは読者を道連れに寒々しい展開になだれ込み。そして目の前に迫る離婚、突然予告なしに帰国する単身赴任の夫。直談判の末に、主人公の決意はいかに・・・??
だんだん読み進めると、最初は距離を置いていた主人公に、その心が揺れ動くさまを、まるで自分のこころがそうなるみたいな錯覚に突如陥りそうになる不思議。
この小説のドライブ感は、後半以降、急激に読者の心を掴んで更に加速していく。
江東区の土屋アンナ、と呼ばれる設定の美雨ママがこの小説におけるキーマンである。彼女の行動力と動物的魅力によって、主人公は変貌へのきっかけを手にする。
総じて、桐野夏生の中期の作品群における異様なほどのアグレッシブさは、ここのところの作品をよむ限りでは息を潜めているかのようにも思える。しかし桐野作品が詰まらなくなったというとそうではない。程度の差こそあれ主人公は同じように過酷な現実を生きている。この作品を通じて知るのは、桐野夏生という作家の熟成である。
いまの桐野夏生先生は、東京に生きる主婦の生態、そんなありふれたテーマを持たせながら、ハードカバーの小説を、一般的な読者に一日で読み切らせる、そんなものすごい筆力とイマジネーションを持った作家である。重ねて言っておくが、主人公は超能力を持った主婦でも、ロシアの諜報機関から報酬を受け取る女スパイでも、はたまた魑魅魍魎をあやつり妖怪ども蹴散らす巫女、いにしえより伝わる秘術を授かる高貴な家系の末裔、でもなんでもないよ。
こいつの前に読んだ「ポリティコン」(上下巻)・・桐野夏生の長編も非常に楽しく読めたんだけど、この2つの物語の持つカタルシスとドライブ感には圧倒されました。古本屋でもし見つけて買ったらぜひ体験して見て欲しいと思います。
また、ネット上で気になった書評のブログのリンクも貼り付けておきます。
◇桐野夏生 『ハピネス』
私が全く知らなかった「ママ友」の世界を皮肉たっぷりに切り込んだ快作
http://yottyann.at.webry.info/201304/article_5.html
(日記風雑読書きなぐり)
◇本の感想:ハピネス/桐野夏生
http://mrgarita.blog.fc2.com/blog-entry-551.html
(まいにちしんぶん 人生は読めないブログ)
《加筆》4/26
桐野夏生の今までの小説にあったかどうかはわからないが、この小説には美雨ママの容姿と性格の設定において、実在のモデル(芸能人)「土屋アンナ」の名がそのまま出てくる。(「江東区の土屋アンナ」と形容される。)このように固有の実在の人物を投影するとは、ちょっと珍しいことにも思えるが、たしかに土屋アンナというパーソナリティーは芸能界の中でも、ほかに言い表しようがない確固たる表現なのかもしれない。そして桐野夏生さんにとって”土屋アンナ”は如何なる存在なのか、というのも気になるところだ。
まあ、土屋アンナがわりと好きなので、嬉しい出来事ではありました。
じゃ。
0 件のコメント:
コメントを投稿